田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか
フリーの国際情勢解説者、田中 宇(たなか・さかい)が、独自の視点で世界を斬る時事問題の分析記事。新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します。原則週1回の無料配信記事と、もっといろいろ詳しく知りたい方のための会員制の配信記事「田中宇プラス」(購読料は6カ月で3000円)があります。以下の記事リストのうち◆がついたものは会員のみ閲覧できます。
ラジオデイズ・田中宇の「世界はこう読め」4月号・・・アメリカの内部分裂と、世界の覚醒
新刊本「世界がドルを棄てた日」(光文社) 渾身の一作!
テロ戦争の終わり
【2009年4月14日】 米政府は、政権がブッシュからオバマに代わっても、911事件に対する公式見解は変えていない。しかし、ブッシュが開始した
「テロ戦争」を、オバマは、目立たないかたちで終わらせる動きを続けている。オバマは「もはやアルカイダは逃げ回っているだけの弱体化した組織なので、オ
サマ・ビンラディンを殺したり捕まえたりすることを最重要の目標にしておく必要はない」と表明している。ビンラディンはすでに死んでいる可能性が高いの
に、オバマが「ビンラディンは死んだ」と言わず「ビンラディンを捕まえなくてもよい」と言う理由は、米国の「軍産複合体」が「テロ産複合体」に発展し、一
大産業と化しているため、彼らに配慮したのだろう。
◆変容する中東政治(2)
【2009年4月9日】 イスラエルは、全方位的に不利になっている。政治面での不利が目立つが、最も重要なのは、実は経済である。世界不況と、世界各国
からしだいに強く受けるようになっているボイコット(経済制裁)の影響で輸出が減り、失業や倒産が増え、国家も企業も家計も赤字が増して、イスラエルは
今、建国以来の経済危機にある。
変容する中東政治
【2009年4月7日】 サウジアラビア東部から近いイラクでは、中世から03年の米軍侵攻まで、サダム・フセインを頂点とする少数派のスンニ派が、多数
派のシーア派を統治してきたが、今では「米国のおかげ」で民主主義が確立され、シーア派主導の国となった。その向こうのイランでは、反米的なアハマディネ
ジャド大統領が米国やイスラエルの戦争犯罪を堂々と指摘し、中東全域で喝采されている。サウジなど他の中東諸国のシーア派は、巡礼としてイラクやイランの
聖地を定期的に訪問するが、この時にイラクやイランのシーア派から政治的な影響を受け、母国に帰ってスンニ派主導の政府に対する要求を表明するようになっ
ている。
◆急落する世界経済とG20
【2009年4月3日】 まだ世の中には「米経済はいずれ回復し、再び世界を牽引する圧倒的な経済大国に戻る」と思う人が多いだろう。だが米オバマ大統領
は、G20サミット前日の記者会見で「米国は巨額の財政赤字を抱え、国民の貯蓄率も低いので、今後長いこと、赤字を減らす独力を続けねばならない」「米経
済が今後回復するとしても、それは米国自身のために回復するのであって、世界から頼ってもらうために回復するのではない」「世界は、もはや米国を旺盛な消
費市場だと思って頼ることはできない」と宣言している。
北朝鮮問題が変える東アジアの枠組み
【2009年3月31日】 北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議が03年に始まってから、早くも6年がすぎた。そして、東アジアの盟主は米国から中国に切り替
わりつつある。中国は、米国のように表舞台の華やかな国際会議中心の外交を好まず、もっと隠然とした非公式な外交を好むので、6カ国協議はしだいに重要で
はなくなるかも知れない。しかし、外交スタイルは変わっても、米国から中国に東アジアの主導権が移ることには違いない。
◆顕在化するドルとポンドの崩壊
【2009年3月27日】 ドルは世界の基軸通貨としての地位を失いかけている。「ドルに代わる通貨がないのだから、ドル崩壊はあり得ない。世界がドル崩
壊を食い止める」と信じている人がまだ多いが、世界はドル崩壊を食い止められない。代わりの基軸通貨のことなど考えずに、ドルは勝手に崩壊しつつある。
世界がドルを棄てた日(3)
【2009年3月24日】 全米各地で「連邦政府に税金を払う必要はない」「政府は腐敗した銀行家を税金で助けるな」と主張する「ボストン茶会」の運動が
始まっている。米国民の怒りはAIGのボーナス問題で煽られ、納税拒否運動は広まる一方だ。税金が集まらなくなると、米政府は窮する。国債の償還が危うく
なるので外国人も米国債を買わなくなり、米国は財政破綻が近づき、ドルは世界の基軸通貨として使えなくなる。
◆世界がドルを棄てた日(2)
【2009年3月21日】・・・やはりG20サミットの底流は「ドル以後の基軸通貨体制の話し合い」であると思わせる出来事が最近あった。ロンドンG20
サミットの開催を2週間後に控えた3月18日、国連の「国際通貨改革専門家会議」が、25日の会合で、ドルが国際基軸通貨である従来の状態を棄てて、新た
にEUのユーロができる前に採られていたECUやIMFの特別引き出し権のような、世界の諸通貨を加重平均した新しい国際共通通貨を創設すべきだという提
案がなされることになった。
国家崩壊に瀕するパキスタン
【2009年3月18日】 アフガンでしだいに弱い立場になる米国が、優勢なタリバンを懐柔しようと譲歩することは、譲歩そのものが失敗するだけでなく、
タリバンの優勢を加速してしまい、タリバンを中心とするイスラム主義勢力が、アフガンだけでなくパキスタンでも台頭することに拍車がかかる。パキスタン政
界ではザルダリとシャリフの対立が激化して分裂し、タリバンに対抗するどころではない。アフガンでの米国の譲歩は、パキスタンの混乱を助長している。
◆どうなるオバマの金融救済
【2009年3月16日】 事態の悪化は螺旋状に進んでいくので、まだ人々がパニックに陥る事態にはなっていないが、今年はもう、投資はなるべくしない方
がいいだろう。「乱高下する今こそ儲かる」という人もいるが、乱高下の本質は、米英イスラエル中枢の暗闘である。この200年の金融システムを創設した
「人々を踊らせる側」「賭博場の胴元」たちの、国家存亡をかけた果たし合いである。彼らに比べたら、日本に住んでいる人々は、大手金融機関の機関投資家で
も相場の根幹に存在する国際政治の深いことは知らないので「ど素人」だ。安易な参戦はやめた方が良い。踊らされて大損するだけだ。
米軍イラク撤退の中東波乱
【2009年3月10日】 米軍内の反対を押し切ってイラク撤退を実現するオバマを評価する人は多い。しかし現実的に見ると、18カ月でイラクから米軍の
主要部分を撤退させるのは物理的、兵站的に、試みる前からほとんど無理である。米軍は世界中に基地を持つが、多くは恒常施設だ。米軍は、大規模な基地を撤
退・閉鎖した経験がない。米軍の実績では、200人が駐屯する基地を閉めるのに2カ月以上かかる。
◆戦争か対話か・中東戦略の目くらまし
【2009年3月6日】オバマ政権はイランと対話する姿勢を見せながらも、イランを敵視する人材を対話担当者に据え、対話の失敗を運命づけている。その一
方で、米国の中東戦略にとって最重要な大統領府の諜報担当責任者に反イスラエル親アラブの人材を据え、イスラエルとの協調をあらかじめ失敗に追い込んでい
る。この2つの人事を矛盾なく読み解くことは難しいが、私にはピンとくるものがある。
黒船ならぬ黒テポドン
【2009年3月3日】日本の現状は「黒船来航で開国を迫られて大騒ぎする幕末の江戸城の旗本たち」に見える。殿中の審議で「もう鎖国をやめるしかありま
せんな」と本音を言ってしまった小沢殿に対して、他の幕臣たちが「なんてことを」「口を慎みなされ」「殿中ですぞ」と大騒ぎしている。他の幕臣にもよい知
恵はなく、おろおろしつつ、あたかも黒船など来ていないかのように振る舞うばかりだ。黒船ならぬ黒テポドンという、たった数発の「太平の眠りを覚ます上喜
撰(蒸気船)」によって、日本は今後、幕末的な大転換期に入っていきそうな感じが強まっている。
◆世界的な「反乱の夏」になる?
【2009年2月26日】英国ロンドンの警察の治安担当幹部が、不況の深刻化による失業増、行政サービスの削減、銀行破綻による預金封鎖などを受け、今年
の夏にかけて英国民が政府批判を強め、大規模な反政府活動や暴動が発生して「反乱の夏」になるかもしれないと指摘した。世界不況の震源地である米国も、今
年は波乱含みだ。米軍はすでに、米国内での反乱鎮圧の準備を着々と進めている。米国とメキシコが戦争する懸念もある。
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